円形脱毛症とは
「円形脱毛症」とは、脱毛が突然生じる疾患です。一般的には10円玉くらいの円形や楕円形の脱毛と思われがちですが、頭部全体に広がるものや、頭髪以外の眉毛やまつ毛、体毛などに及ぶ重度のものまで症状は様々です。
円形脱毛症の症状
円形から斑状の脱毛斑が単発または複数生じます。通常自覚症状はありませんが、脱毛する前に軽い痒みや違和感を伴うことがあります。
男女差はほとんどなく、比較的20~30代の若い世代に多い傾向があります。
円形脱毛症の原因
円形脱毛症の原因には様々な説がありますが、免疫系が発毛組織を攻撃してしまう「自己免疫疾患」であると考えられています。
そのほかにはアトピー性疾患、精神的ストレス、産後の女性ホルモン値の変化、遺伝的要因なども影響しているとされています 特に、円形脱毛症の患者の多くがアトピー性疾患やその素因を持つといわれており、こちらも深い関連があると考えられています。
1.自己免疫疾患
一般的に抜け毛が発生するとストレスが多いからかなと考えがちですが、ストレスは抜け毛を発生させ易くする要因の一つだと言われていますが、主要な原因としては、本来は身体を守ってくれる役割を果たす免疫が異常な反応を起こしてしまう「自己免疫疾患」だと考えられるようになってきました。
「自己免疫疾患」とは、外部からの侵入物を攻撃することで私たちの体を守ってくれている免疫系機能が、本来攻撃対象ではない、自分の体の一部分を異物とみなして攻撃してしまう病気です。
円形脱毛症は、免疫が毛根を異物と認識して攻撃してしまうために発症すると考えられていますがなぜその様な免疫の異常が発生するメカニズムはまだ明らかになっていません。
また円形脱毛症は、尋常性白斑、甲状腺疾患、リウマチ、あるいは重症筋無力症などの他の自己免疫疾患と併発する場合が多いと言われています。
2.アトピー素因
アトピーと聞くとまずアトピー性皮膚炎が思い浮かぶかと思いますが、アトピー素因とは、
(1)本人または家族が、アレルギー性の病気(アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、ぜんそく、結膜炎等)を持っていること、
(2)アレルギーと深い関係がある免疫物質「IgE抗体」を作りやすい体質を持っていることをいいます。
つまり、アトピー素因とはアレルギーを起こしやすい体質といえます。
円形脱毛症患者の40%以上がアトピー素因を持つと言われ、半数以上が本人もしくは家族にアトピー素因が認められるなど、遺伝とも関連があるとされています、アトピー性疾患も免疫と関係が深いため、円形脱毛症と原因の一つ考えられます。
3.遺伝的要因
円形脱毛症の患者さんの約8%は、血縁関係のある家族が同じく円形脱毛症を発症というデータがあります。
どのような遺伝的な要素が関与しているのかはまだはっきりしていませんが、ある程度、円形脱毛症には遺伝的な要素が関連していると考えられています。
発症率は親等が近いほど高くなり、一親等の発症率は二親等以上の家族の10倍にもなると言われています。だだし、家族に円形脱毛症の方がいても、ご自身が必ず発症するとは限りません。あまり悩みすぎてストレスを抱えないようにしてください。
4.ストレス
また、円形脱毛症は精神的なストレスが一つの要因とも考えられています。
精神的ストレスに抵抗するため、交感神経を活発に働かせています。
ストレスが強すぎたり、過度なストレスを感じる状況が長期間続くと、この交感神経に異常が生じ、血管の収縮により血流が悪くなり、毛根への栄養補給が行き届かなくなって脱毛が引き起こされると考えられています。
治療方法
光線療法
当院では紫外線を脱毛部に照射する光線治療を行なっています。
アトピー性皮膚炎や尋常性白斑などの皮膚病に対しても行なわれる治療法です。
光線を照射することで皮下の免疫状態を改善していくので、円形脱毛症にも効果が期待できると考えられています。
副作用として、紫外線を照射するため、照射部位にヒリヒリ感やかゆみが生じる場合がありますが、2~4日程度で治まることがほとんどです。
当新宿皮膚と心の診療所では局所的に光線を照射する治療器を使い治療を行っています。
ターゲット型で、脱毛部にだけピンポイントで治療できる波長308nmのエキシマライト『VTRAC(ヴイトラック)』使用しております。『VTRAC(ヴイトラック)』は小範囲の病変部に局所的に照射できるターゲット型のエキシマライト治療器です。最小で2㎝×2㎝(4㎠)の範囲に対して照射可能となり健常部位への紫外線暴露を防ぎます。細かい病変や辺縁にも照射しやすい設計になっています。
円形脱毛症には、紫外線療法(長波または中波)の保険が適用されますので、1回あたり自己負担は1000円程度(3割負担)となります。
初回治療の流れ
1.ご説明
初めて治療を受けられる方には、医師及び看護師より治療についての注意点などをご説明します。
2.光線テスト照射 1回目
症状や肌の状態に合わせ、適切なエネルギーを設定し、テスト照射を行います。
翌日(24時間後)に来院いただき、適切な光線の強度を判定し肌の状態を診察します。(翌日来院難しい場合はご相談下さい)
※症状や肌の状態によっては、テスト照射を行わない場合もあります。
※また他院での光線治療中の方で光線管理手帳等お持ちでしたら、照射量の参考とさせていただきます。
3.光線テスト照射 2回目~
2回目以降は光線テストの結果を基に照射量を決めていきます。
効果に合わせて徐々に光線量を調節しながら治療を行っていきます。
円形脱毛症治療のよくあるご質問
光線治療の費用はどのぐらいですか?
1回1,000円程度です(保険適用3割負担の場合)。初診・再診料などが別途かかります。
1回の治療時間はどれぐらいですか?
5分~20分程度です。(範囲による)
実際の照射時間は患者の症状により異なりますが、ナローバンドUVBはおおむね5分程度、エキシマライトは1回数秒で終了します。
どのぐらいの頻度での通院が必要ですか?
治療の初期は週に2~3回の頻度で通院頂くことをおすすめしますが、週1程度の通院をされている患者様もいらっしゃいますので、お気軽にご相談ください。
症状の改善により徐々に通院回数は減っていきます。
※効果の発現の早さには個人差があります。
痛みや副作用はありますか?
痛みは、ほぼありません。
光線治療の副作用は短期的なものとしては照射した部分の赤みや日焼け、ほてりなどが感じられる場合があります。長期的なものでは紫外線による皮膚がん等の発がん性やシミ・シワの光老化の可能性があります。
ただし従来の紫外線治療の一種である、UVAを用いるPUVA療法などと比べますと、上記で述べたいずれの症状も起きにくくなっています。
※副作用等ご心配なことは、医師もしくは看護師にお気軽にご相談ください。
眉毛に脱毛が見られるのですが、治療できますか?
治療可能です。お顔に照射する場合は、目を保護するため専用のサングラスを着用できますのでご安心ください。
顔に照射した場合、洗顔やメイクは可能ですか?
光線照射直後から可能です。
院長より
円形脱毛症は他の病気が自己免疫に関わる病気が合併することがあります。
円形脱毛症には自己免疫の疾患(自分の組織を攻撃する)が関わっていると言われ、甲状腺疾患などの他の自己免疫疾患が最もよくみられます。
最も関連性が強いのは甲状腺の活動過剰(甲状腺機能亢進症、特にバセドウ病)と甲状腺の活動不足(甲状腺機能低下症、特に橋本甲状腺炎)です。必要に応じて血液検査を行い、円形脱毛症以外の病気がみつかることがあります。
円形脱毛症は見つけたら放置しないでください。新宿皮膚と心の診療所のご相談ください。 早期発見、早期治療が、より少ない回数での治療が可能となります。